熱電対の種類と特徴
~それぞれの窯や炉に合わせた熱電対を選びましょう~
炉や窯は、その環境や焼く対象物によって劣化の速度などが異なります。
そのため、温度制御を行うには、それぞれに適した熱電対の種類を選ぶことが重要です。
このページでは、「西林電機製作所」が熱電対の種類と、各々の特徴についてご紹介します。
JIS規格熱電対の種類と使用温度
ほとんどの場合にB、R、Kにて対応可能です。
ただし、炉の雰囲気が特殊な場合は、その雰囲気にあわせて他の種類を使用します。
炉や窯の雰囲気にあわせて選定することが重要です。
熱電対の種類 |
使用温度範囲(℃) |
過熱使用限度(℃) |
特徴 |
B |
0~1500 |
1700 |
JIS規格の熱電対の中でもっとも使用温度が高い。
詳細はこちら(B) |
R |
0~1400 |
1600 |
精度が高くバラツキ・劣化が少ないので、標準熱電対として利用される。
詳細はこちら(R) |
S |
0~1400 |
1600 |
R熱電対と同様の特徴を持つ。 違いはロジウムの含有量。
詳細はこちら(S) |
N |
-200~1200 |
1250 |
低温から高温まで、広範囲で安定した熱起電力。
詳細はこちら(N) |
K |
-200~1000 |
1200 |
熱起電力の直線性に優れ、工業用として多く利用される。
詳細はこちら(K) |
E |
-200~700 |
800 |
JIS規格の熱電対の中でもっとも高い熱起電力特性を持つ。
詳細はこちら(E) |
J |
0~600 |
750 |
E熱電対に次ぐ高い熱起電力特性を持ち、工業用として中温域で使用される。
詳細はこちら(J) |
T |
-200~300 |
350 |
電気抵抗が小さく、熱起電力が安定しているため、低温での精密測定に利用される。
詳細はこちら(T) |
各熱電対の特徴および許容
B熱電対
メリット |
デメリット |
1000℃以上の測定に適している |
600℃以下の測定には熱起電力が小さいため向かない |
常温の場合、熱起電力が微小であるため、補償導線がいらない |
低感度である |
耐酸化、耐薬品性に優れる |
熱起電力の直線性に劣る |
還元性雰囲気であってもRと比較して10~20倍の寿命になる |
コストが高い |
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~1500℃ |
1700℃ |
ロジウム30%を含む白金ロジウム合金 |
ロジウム6%を含む白金ロジウム合金 |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
- |
- |
0.5級 |
温度範囲(℃) |
- |
- |
600~800 |
許容差(℃) |
- |
- |
±4.0 |
温度範囲(℃) |
- |
600~1700 |
800~1700 |
許容差(℃) |
- |
±0.0025・|t| |
±0.0051|t| |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
R熱電対
メリット |
デメリット |
精度に優れバラツキや劣化が少ない |
低感度である |
耐酸化、耐薬品性に優れる |
還元性雰囲気、金属蒸気に対して弱い |
標準用として使用できる |
コストが高い |
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~1400℃ |
1600℃ |
ロジウム13%を含む白金ロジウム合金 |
白金 |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
- |
0.25級 |
- |
温度範囲(℃) |
0 ~1100 |
0 ~600 |
- |
許容差(℃) |
±1℃ |
±1.5℃ |
- |
温度範囲(℃) |
- |
600~1600 |
- |
許容差(℃) |
- |
±0.0025・|t| |
- |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
S熱電対
メリット |
デメリット |
精度に優れバラツキや劣化が少ない |
低感度である |
耐酸化、耐薬品性に優れる |
還元性雰囲気、金属蒸気に対して弱い |
標準用として使用できる |
コストが高い |
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~1400℃ |
1600℃ |
ロジウム10%を含む白金ロジウム合金 |
白金 |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
- |
0.25級 |
- |
温度範囲(℃) |
0 ~1100 |
0 ~600 |
- |
許容差(℃) |
±1℃ |
±1.5℃ |
- |
温度範囲(℃) |
- |
600~1600 |
- |
許容差(℃) |
- |
±0.0025・|t| |
- |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
N熱電対
メリット |
デメリット |
K熱電対と比較し、1000~1200℃での耐酸化性に優れる。
また、ショートレンジオーダリングが改善されている。 |
電気抵抗が大きい |
|
600℃以下の直線性に劣る |
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
-200℃~1200℃ |
1250℃ |
ニッケル、クロムおよびシリコンを主とした合金(ナイクロシル) |
ニッケルおよびシリコンを主とした合金(ナイシル) |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
- |
- |
- |
温度範囲(℃) |
-40 ~375 |
-40 ~333 |
-167~-40 |
許容差(℃) |
±1.5℃ |
±2.5℃ |
±2.5℃ |
温度範囲(℃) |
375~1100 |
333~1200 |
-200~-167 |
許容差(℃) |
±0.004・|t| |
±0.0075・|t| |
±0.015・|t| |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
K熱電対
メリット |
デメリット |
熱起電力の直線性に優れている |
還元性雰囲気に適さない |
耐酸化性に優れている |
ショートレンジオーダリングであるため、350~550℃での使用は短時間で起電力が大きく変化してしまう |
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
-200℃~1000℃ |
1200℃ |
ニッケルおよびクロムを主とした合金(クロメル) |
ニッケルを主とした合金(アルメル) |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
0.4級 |
0.75級 |
1.5級 |
温度範囲(℃) |
-40 ~375 |
-40~333 |
-167~40 |
許容差(℃) |
±1.5℃ |
±2.5℃ |
±2.5℃ |
温度範囲(℃) |
375~1100 |
333~1200 |
-200~-167 |
許容差(℃) |
±0.004・|t| |
±0.0075・|t| |
±0.015・|t| |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
E熱電対
メリット |
デメリット |
熱起電力が大きい |
還元性雰囲気に適さない |
J熱電対と比較し、耐蝕性に優れる |
電気抵抗が大きい |
両脚が非磁性である |
|
熱伝導が小さい |
|
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
-200℃~700℃ |
800℃ |
ニッケルおよびクロムを主とした合金(クロメル) |
銅およびニッケルを主とした合金(コンスタンタン) |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
0.4級 |
0.75級 |
1.5級 |
温度範囲(℃) |
-40 ~375 |
-40 ~333 |
-167~40 |
許容差(℃) |
±1.5℃ |
±2.5℃ |
±2.5℃ |
温度範囲(℃) |
375~800 |
333~900 |
-200~-167 |
許容差(℃) |
±0.004・|t| |
±0.0075・|t| |
±0.015・|t| |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
J熱電対
メリット |
デメリット |
コストが安い |
+脚の鉄が錆びやすい |
還元性雰囲気で使用できる |
特性のバラツキが大きい |
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~600℃ |
750℃ |
鉄 |
銅およびニッケルを主とした合金(コンスタンタン) |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
0.4級 |
0.75級 |
- |
温度範囲(℃) |
-40 ~375 |
-40~333 |
- |
許容差(℃) |
±1.5℃ |
±2.5℃ |
- |
温度範囲(℃) |
375~750 |
333~750 |
- |
許容差(℃) |
±0.004・|t| |
±0.0075・|t| |
- |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
T熱電対
メリット |
デメリット |
熱起電力の直線性に優れる |
+脚の鉄が錆びやすい |
品質のバラツキが少ない |
熱伝導が大きい |
還元性雰囲気で使用ができる |
|
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
-200℃~300℃ |
350℃ |
銅 |
銅およびニッケルを主とした合金(コンスタンタン) |
|
クラス1 |
クラス2 |
クラス3 |
旧階級 |
0.4級 |
0.75級 |
1.5級 |
温度範囲(℃) |
-40 ~125 |
-40~133 |
-67 ~40 |
許容差(℃) |
±0.5℃ |
±1℃ |
±1℃ |
温度範囲(℃) |
125~350 |
133~350 |
-200~-67 |
許容差(℃) |
±0.004・|t| |
±0.0075・|t| |
±0.015・|t| |
※温度範囲はすべて以上、未満の値です
JIS規格外の熱電対
金鉄・クロメル(AF)
極低温測定にもっとも適した熱電対です。
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
-269℃~30℃ |
- |
ニッケルおよびクロムを主とした合金(クロメル) |
鉄0.07%を含む金鉄合金 |
イリジウム・ロジウム
真空・不活性ガスおよび、やや酸化雰囲気に適した熱電対です。
なお、イリジウムの蒸発による汚染や、耐久性が低いといったデメリットがあります。
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
1100℃~2000℃ |
2100℃ |
ロジウム50%を含むイリジウム・ロジウム合金 |
イリジウム |
タングステン・レニウム
還元雰囲気、不活性ガス、水素気体に適した熱電対です。
耐久性が低いというデメリットがあります。
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~2400℃ |
3000℃ |
レニウム5%を含むタングステン・レニウム合金 |
レニウム26%を含むタングステン・レニウム合金 |
ニッケル・モリブデン
還元雰囲気中で使用ができ、熱起電力が大きいという特徴を持つ熱電対です。
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~1200℃ |
1250℃ |
モリブデン18%を含むニッケル・モリブデン合金 |
ニッケル |
プラチネル
耐摩耗性に優れ、K熱電対とほぼ同じ熱起電力を持つ熱電対です。
構成素材 |
使用温度範囲 |
過熱使用限度 |
+脚 |
-脚 |
0℃~1100℃ |
1300℃ |
パラジウム、白金および金を主とした合金 |
金およびパラジウムを主とした合金 |
熱電対の基礎情報